vol.11 いつも自分の中にヒントがある [10/15]

昨日の星のホールは250名収容の劇場でした。その前の鎌倉芸術館大ホールが1500名でしたから、ぐっとぐぐっと小さな空間でした。音の反響も違いますし、なにしろ見ている人の数が全然少ないので笑い声なんかも本多劇場と比べても、それこそあっと言う間に消えてしまいます。つまり、お客さんとの呼吸が難しいのです。ひとつの劇場で続けてやっていると自然に丁度いいタイミングがつかめてきます。ところが、今回の旅公演ではリハーサルがないので実際に本番をやりながら計っていくことになるのです。

しかも本多劇場に来る演劇に慣れているお客さんと違って、あまりお芝居を観たことのない方もたくさんいらっしゃいますので、その反応の違いを一層感じることになるのです。昨日のお昼の回は特に年配の方が多かったようで、静かな落ち着いた客席を感じました。その分演じる側は、より嘘のない信じられる人物にしていかないと受け入れてもらえません。

今回の稽古場で演出の綾田さんに言われた言葉に、「日常生活より下手な芝居にしないでほしい」というのがありました。確かに我々は普段からある種の演技をしています。演技と呼ぶと偽りの人生と聞こえてしまうかもしれません。つまり、自分の気持ちをあからさまには出さないで暮らしているということです。

誰だってやっているはずです。例えば、ご近所に赤ちゃんが産まれて初めて対面した時、それほどかわいいとは見えなかったらどうしますか?「うわぁ、変な顔」と思っても口では絶対に悟られないように「元気なお子さんですね」とか「お父さんそっくりですね」と言ったりしませんか?

これも立派な演技です、しかも相手がそれで喜んでくれたならパーフェクトな演技と呼んでいいでしょう。

つまり普段から我々は演技の技術を使っているのです。特におじいちゃんやおばあちゃんは人生経験が豊富ですから、ちょっとでも嘘の演技をしたらすぐにばれてしまいます。

まぁ、それが出来るようになるのが難しい訳ですが、それでもいつも自分でやっているんですからいつかは上手になるのでしょう。お芝居を特別なものだと感じなくなればね。

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