vol.7 声と感情 [8/22]

演出家に「声が小さい!!」と言われてどなっているうちに喉が嗄れてしまう人がいますよね?そんな方の役にたつかもしれない話です。

喉が嗄れるということは、息を「吐く時」、喉に力が入って台詞をしゃべっているからです。息を「吸う」時は、しゃべれませんので(当たり前)、喉に負担はかかりません。つまり息を「吐く時」、すなわち「台詞をしゃべる」時には、「絶対に力を入れてはいけない」のです。そうすれば喉は嗄れないのです。

〜ポイント〜「台詞をしゃべる時には力を入れない」

演出家に「感情を大きくしろ!!」と言われて大きな声にする人がいますが、これは間違いです。なぜなら、台詞をしゃべる時には絶対に力を入れてはいけないからです。 さて、演出家に「声も小さいし、感情も足りない」と言われている役者がいるとしましょう。こういう時に、大きな間違いが起こるのです。

役者は感情を込めようとして台詞に力を入れてしまうのです。つまり、声の力で感情を表現しようとしてしまうのです。そうすると、汚い声になるし、喉も嗄れるし、いいことはひとつもありません。台詞(声)と感情は別物だと考えてください。強く台詞を言った時に、感情が盛り上がることはあるでしょう。でも、それはたまたまそうなっただけで、本当はいけないことなのです。なぜなら、「台詞をしゃべる時には力を入れない」からです。

では、感情はどこにあるのでしょうか?

例えば、電車に乗っていてひどい酔っ払いがからんできたとします。相手にするのも腹が立つので、黙って無視します。その時に「怒り」を感じている場所、そこがあなたの感情の発生する場所です。名前は「感情6号線」です。

今くだらないね〜と思ったあなた、その「くだらね〜」を感じた場所が、「感情8号線」です。違う場所ですか?同じ場所ですか?

さぁ、その時あなたはしゃべっていませんよね?ということは、言葉と感情は別物なのです。だから、台詞に感情を込めるというのは厳密に言うと間違いなのです。演劇の稽古に「外郎売り」という歌舞伎からきた早口言葉があります。これを使って、声と感情を稽古をいっぺんにやってしまいましょう。

まず「外郎売り」は完璧に覚えます。アイロンをかけながらでも出来るくらいに完璧にです。次に、「外郎売り」をやりながら、怒りの気持ちをどんどん大きくしていきましょう。ただし、声を荒げるのはなしです。よく響く、聞き取りやすい声でなければいけません。どんどん怒ってくると、違う口調になるかもしれません、これはOKです。でもよく響く、聞き取りやすい声は忘れないでください。小さい声の方が怒りがより大きくなる人もいると思います、全然OKです。「怒り」を「悲しみ」や「楽しさ」に変えて、感情を大きくしたり小さくしたりしてみましょう。もしこれが難しい場合は、黙ったまま感情を上げたり下げたりしてみるといいでしょう。

この「外郎売り」の稽古をやっている時には、役者は「よい声でしゃべる」ということと、「ある感情を盛り上げる」ということを同時に行うことになります。

本日のまとめです。

声と感情は別物なので、今あなたが感じている「ある感情」は、次にしゃべるための物なのです。だから、「ばかやろ〜」と言っている時は気持ちは「ばかやろ〜」ではないんです。その次に言おうと思っている、「でも好きだ〜」なのです。「ばかやろ〜」という気持ちは、「ばかやろ〜」と言う前に発生しているはずです。

ねっ、そうじゃありませんか?

気を失うのでもなければ、感情はずっと続いていくのです。ただ、ある感情を持っていても、それは口にはせずに、また次の気持ちになったりはするでしょうが。難しいことではありません。そうやって我々は普段生きているのですから。