「また逢おうと竜馬は言った」の稽古も第三週目に入ります。先日の休演日には「カレッジ〜」に出演している坂口理恵と篠田剛、そして演出として真柴あずきも稽古に行ったようです。坂口と篠田は読み合わせ以来一度も稽古をしていないのにいきなり通し稽古だったようですが、それはそれで面白かったようです(坂口のサヴァに書いてありました)。お芝居で会う人全てが初対面といいう大変貴重な経験をしたのですからね。
舞台は長い間稽古ができますが、テレビのドラマでは連ドラのレギュラーでもない限り、スタジオに行ったその日初めて会った人と演技をするわけです。勿論、自分の役作りというものは準備していかなければならないでしょう。まぁ、名刺のようなものですね。「私は〇〇という者です」と提示しなければ、どんな人なのか理解してもらえませんから。
でも、大事なのはそのことではありません。相手の方がどんな演技をしているかが重要なポイントになってくるのです。シーンは一人で作るものではありませんし、二人でちぐはぐな会話をしていては見ている方にはなにも伝わりません。
菅野良一が映画「緑の街」に出演した時に言っていたことですが、津川雅彦さんはどんな芝居をしてもちゃんと返してくれるからとても楽にやれたというのです。津川さんのような大ベテランですから、菅野のようなぺーぺーをあしらうことくらい簡単なことだったのかもしれませんが、その津川さんにとっても菅野は初対面だったわけです。津川さんは菅野の演技を受け入れて、菅野が取りやすいボールを返してくれただけなのかもしれません。
上川隆也も「大地の子」で似たようなことを言っていました。中国ロケから帰ってきた彼に皆が同じように「どうだった?大変だった?」と質問を浴びせていた時、こんな言葉が漏れました。
「僕なんか相手の方が投げてくれたものを返すだけで精一杯でした」
それがあの陸一心だったのです。
仲代さんに必死で返している隆也は、もうその瞬間に一心になっていたのでしょう。
まず、相手を100%認め受け入れること。そしてきちんと相手に返すこと。これだけで、ある程度は役に近づけるのかもしれません。
最後においらの実体験を。
どんなに時間をかけて考えていても出なかった役のキャラクターが、ちょっとした一言でがらっと変われてしまうことがあります。それは、その言葉が自分にとっての「キーワード」だったからです。そう、役に近づくためには自分だけの「キーワード」を探すことが大事なのです。
例えば、「キャンドルは燃えているか」の神戸役の時は、「自分の人生をどう過ごすか」がおいらにとってのキーワードでした。システムエンジニアとして長い間働いてきた神戸は、ハリマの記事を見て自分が昔持っていた夢を実現させようと決意します。それには家族の反対があるかもしれません。しかし、彼は「自分の人生」を尊重させたのです。その態度は、ハリマに乗り込んでいく時に現れます。「俺は五千万に目が眩んでとんでもないものを作ってしまった。そいつをそのままにして逃げるわけにはいかないんだ」危険を顧みずハリマへ侵入していこうとする。これも彼の「人生の選択」です。ひとつのキーワードからキャラクターの行動の動機がいろいろ見えてんます。
「MIRAGE」の時は「真澄への思い」がキーワードでした。ちゃんと奥さんがいる役でしたが、昔からの友達(かつては淡い思いを抱いていたかもしれない相手)のためと考えることで、新庄先生を励ますために英語の授業を受けたりする行動の理由がはっきりとしたのです。
そう考えると、「役作り」というよりも「役探し」といった方が適当なのかもしれません。「作る」というと自分の中に答えを求めがちですが、「探す」という行為は自分の外にも目を向けることです。
ヒントはあなたのすぐそばにあるのかもしれません。ただし、心静かにじっと目を凝らさないと見えないし、感じられない繊細なものだと思っておいた方がいいようです。