今日で神戸公演も四日目になりました。毎日たくさんのお客さんが足を運んでくれていて、大変嬉しいです。いくら自分たちが頑張っていても、見てくれる人がいないんじゃ甲斐がありませんからね。その点、キャラメルボックスはとても恵まれていると思います。
稽古場にいる時は自分達がやっている演技についてあれこれ考えているわけですが、劇場に入るとお客さんのことも考えなければなりません。別に媚びるとかそういうことじゃなくて、お客さんにとって分かりやすいか、面白いか、気持ちが伝わるかが問題になってくるのです。
長い間一緒に稽古をしてくると、悪い意味で分かり過ぎてしまうことがあるのです。
例えば台詞。役者が同じ台詞を話しているのを何回も何回も聞いていると、しまいには初めての人には聞き取れないような速度でしゃべっても平気になってしまうことがあります。関係者には理解できるのですが、お客さんにはさっぱりなんのことだか分かりません。これじゃだめですよね。
それから「間」(ま)の問題。自分が気持ちよくしゃべったからといって、それがお客さんたちの生理に合った間になっているとは限りません。ひとりではなく大勢が一緒になって作っている空気というものがあるからです。
そう、この「空気」を感じられるかどうかが大事なのです。それは別に特別な能力ではありません。お客さんの視点に立てるかどうかが問題なのです。お客さんは舞台上で起こっていることをすのまま素直に受け入れています。当たり前のことですが、お客さんは台本を読んでいるわけではありません。ですから、台詞がちょっと間違っていても分かりはしないのです。…あっ、くれぐれも間違ってもいいと言ってるわけではありませんので誤解のないように(笑)。
つまり、舞台上で起きていることがお客さんにとっての真実なのです。これは役者にとっては、自分がやっていること以外にも注意をしなければならないということです。誰でも自分のことが一番気になるものです。しかし、お客さんはひとりの役者をずっと見ているわけではないのです…なかには「私は達也さんしか目に入らない」という人もまれにはいるでしょうが(笑)。
本日のまとめです。
役者は自分の回りで起こっていることに常に注目し、その都度適切な判断の元に演技を修正していく必要があるということです。それこそが、お客さんと一緒にひとつの世界を作っていくことになるのです。
お客さんは毎日違います。ですから客席の雰囲気も毎日全然違います。それを受け入れて、一緒に楽しむことができれば、そのステージは成功したと言えるのだと思います。